また被告人は、部下にリースバックスキームを行うように指示しており、さらにはリースバックに使用した通信機器についての物件を特定していない。弁解は成り立たない。
平成電電匿名組合第20号に使用するためのリースバック用の通信機器については、もうかなり前の号で枯渇している。
結局のところこの公判で争っていることは、リースバック取引における匿名組合についてどのくらいの違法性の認識があったかということだけだ。
しかも被告人は、リースバックが有効に成立する見込みもなく、平成電電(本体)の経営内容が当初から劣悪で、その匿名組合がなければ、平成電電が成立しないことは
わかっていた。平成電電は業績が振るわず、運転資金や配当に窮していた。
平成15年春ごろ直収線事業(chokka)を拡大するということで匿名組合に資金調達を依頼した。そして、熊本徳夫と坂上好治は設備社・システム社
に匿名組合の営業を開始して、本スキームでは平成電電設備が購入先として「NEC、ルーセントテクノロジーズ、サムソン電子」と記載されたパンフレット
により一般の投資家から資金を集めていた。平成16年1月には273億円の債務超過に陥っていた。
平成16年夏ごろ、DT社(ドリームテクノロジーズ株式会社)から(平成電電が購入などのをしたところに支払うための)支払いのために事業上の与信を得させた。
大村公認会計士(平成16年、平成17年分の平成電電の決算を担当した太陽監査法人)はそのころには既に、「事業継続の疑義」を言い渡していた。
そして、平成電電匿名組合第10号(平成16年10月募集分)から対象となる通信機器の取引(平成電電設備・平成電電システム)はDTSJ社(ドリームテクノロジーズセールスジャパン
株式会社)を介在することで、熊本徳夫被告人と合意した。
それからであっても平成電電(本体)の決算は平成17年1月で75億円の赤字、同年2月以降も10〜41億円の損失を計上していた。
また平成17年2月にはみずほ銀行から、直収線事業では明るくない(先行きが不透明)ということで、メインバンクからも見放されてしまった。
さらに同年には20億円をDT社とオム二社(オム二トラストジャパン)に環流させて無償で株を取得していた。
平成17年9月に田代(元平成電電株式会社経理部長)の後任として国友がその職を担当した。国友は平成電電の資金繰りがショートするので坂上(平成電電設備・平成電電システム取締役)
に資金(平成電電匿名組合の分の)を振り込むよう依頼していた。
平成電電匿名組合第20号の資金について言うと、匿名組合で集めた資金は、運転資金やリース料の支払いに充てていた。
平成電電ステム(システム社)は(平成電電匿名組合第20号について)平成17年7月より匿名組合の組合員の募集を開始(8月5日〜8月31日)
した。その30名についての出資金の合計は3億6千万円余、20号分で合計して36億円余の振込みを(システム社は)受けていた。
システム社より資金を受けたあとの使途はNTTの接続費用やDT社のISP事業の支払い等にに充てていた。残りの229万円のみ設備に使っていた。
クルマ公認会計士(弁護人側の証人で弁護人からの依頼した書類の会計的分析を担当)は証言で平成電電は直ちに経営破たんをするような状況ではないとの
意見を附した。しかし、大村公認会計士、岩崎財務捜査官(警視庁捜査2課)、平成電電破産管財人の資料や、その他の平成電電の状況をほとんどわかっておらず、
自らも「よくわからない」と証言もした。
被告人は平成電電の財務状況がよくない、リースバック取引を取り入れるのはよくないことだという報告も受けていた。